逆転オセロニア 旅路の風 | 第四章 幻想異界 白の塔
果汁100%のコーラ

【4】十階層:新しき恐れ

スタスタ、ザッ ここは白の塔、十階層。 三階層から九階層、何もない空間が続いていた。 しかし、この階層は深い森に包まれていた。 日差しも入らない森の大地は大小様々なキノコ達が群生していた。 ボスッ、ボスッ 一歩踏み出すたびに、キノコを踏みつけ胞子を撒き散らした。 「コホコホッ。」 「大丈夫、口をこれで覆ったほうがいいんじゃないの。」 ベルゼブブが咳き込むフールにハンカチを差し出した。 「大丈夫です。 僕はいりません、アルテレンに渡してください。」 フールは、そう言い、走り去ってベルゼブブと一定の距離をとって歩いていた。 「坊や・・・。」 「ベルゼブブさん、あれを。」 アルテレンが指差した場所に異様な雰囲気を感じられた。 「いくらなんでもやっぱりおかしい。 どんなに相手が命を奪おうとしてもヘルヴォルさんだったら、話しを聞いてから戦っていた。それも彼女は何も言わず、自ら相手の命を奪うことはなかったんだ。」 フールは、何度もその考えに間違いがないか振り返っていた。 ガシッ、ザッ いきなり、フールはベルゼブブに抱えられ近くにあった大木にアルテレンと一緒に身を潜めた。 「何をするんですか。」 「静かに!!!」 遠くから咀嚼する音が聞こえた。 ハムッ、モグモグ ゴクン ハムッ、モグモグ 遠くを見ると、いくつもの機能停止した人の顔を模した銅像のようなものが山のように積み上がりそれを手頃な形にむしり取ると、口に運んで食べていた者がいた。 その姿は、幼い少女で極東の国にある甲虫を模した兜に純白の和服を着ていた。 人のように見えるが腕の部分は、華奢な体に違和感を覚えるほどの太い腕で手のひらも指ではなく、5つの刃物のような大きさと鋭さを持っている爪でベルゼブブよりも重厚だった。 ベルゼブブが大木の影からその様子を伺っていた。 「あれは、黒の大地の極東にいる魔蟲の姫君エントマリー。 なぜ、彼女がここに。」 エントマリーは、気配を感じたのかその食べているものの欠片を爪でむしり取るのを止めて言った。 「そこにいるのは、分かっている。 冒涜者と月読よ。」 ベルゼブブは、苦笑いしながら二人に言った。 「バレているわね。 彼女もあのサハギンと感じられたものと同じ匂いがするわね。 私の話は通じないと思うから二人は離れていて。」 「いや、僕は離れない。」 「坊やだめよ、危険すぎる。」 「彼女と話しをするだけだ。 もしかしたら戦わずにすむかもしれない。」 フールはそう言い、少女のもとに走り出した。 「なんだ、貴様は。」 「僕はフール。 なぜ君達は、こんなことをする。」 「なんだ、貴様か。 キキキキキィ 我が主に貴様は邪魔だ!!!」 その少女は、虫の羽が擦れたような笑い声を上げながら、その刃物のような爪を突然フールに振り下ろした。 ガッ ベルゼブブはフールの前に現れて振り下ろされる爪を受け止めた。 「誰だか分からんが貴様も神を信じているのか。」 「キキキキィ  愚問だよ、かの神を信じない冒涜者よ。 貴様のようなものがバッコする星は、やはり我が神に献上し、一度新生させなければならない。 これは、慈悲だ。」 エントマリーは、水も凍りつく眼差しで睨みつけてた。 「ハハハハッ、いきなり現れた神を誰が信じる。 我ら七罪は、生きる者の原罪を元に生まれ、それを背負うもの。 貴様らの神よりもよっぽどこの星とは関係が深いわ。」 ベルゼブブは、高笑いした。 「愚かなやはり滅べ。 我が神は、貴様らを生かそうとしたが、このような態度では我らの糧となるほうが救われるだろう。」 ジジジジィ 森から鱗粉の持った三角の羽を持った全身黒光りする大きな眼を持った人ほどの大きさの昆虫の群れが次々と飛んできた。 「行け!!! 我らの底力を見せつけろ!!」 エントマリーが号令を掛けるとその虫達は、昆虫特有の縦に割れた口を開け、噛みつこうとした。 ベルゼブブが鋭い赤き爪で切り裂こうとするとその虫達は、彼女を素通りした。 「なにぃ!!!」 「貴様は、あとだ。 一番厄介な奴を先に喰らってやる。」 狙いは、フールだった。 「危ない!!!」 ベルゼブブは、全力の一蹴りで大地を駆け、フールの前に再び立ちふさがった。 ガジャン ベルゼブブは、この虫達の攻撃は防げず、背中からまともにくらった。 背中は、鮮血が飛び散りフールの顔に降り注いだ。 「坊や、これが現実だよ。」 ベルゼブブはフールを守るために抱きかかえ、自ら盾になった。 「あっあっあ。」 エントマリーの虫達が攻撃をしようとすると・・・。 「くらえ!!!」 毒と炎の混ざった煌々とした紫の炎がベルゼブブを守るように燃え上がり虫達を怯ませた。 「キキキキィ やはり、月読は成熟のときか、ならばあのお方も喜びになられる。 炎なぞ気にせず月読だけを生かして後は殺せ!!!」 エントマリーの声のもとに虫達は炎を気にせず突っ込み、縦に割れた金属状の濡れた口で噛みつこうとした。 すると、動けないベルゼブブを地面にそっと置き、フールはその虫達を睨みつけた。 「ギギギギャァァァ」 睨みつけられた虫達は、突然暴れだし仲間同士で噛みつきあった。 「何をしているお前たち!!!」 エントマリーが慌てて、同士討ちをしている虫達を重厚な爪で頭を叩きつけて気絶させた。 「分が悪い撤退するぞ。」 エントマリーは、気絶した虫を軽々と抱え、仲間の虫たちととも嫌な羽音を立てながら森の奥に消えた。 「アルテレン君、ベルゼブブさん!!!」 アルテレンが近づくとフールもベルゼブブと一緒に倒れ込んだ。 Now loading・・・ ミカエルが驚愕した顔で言った。 「なぜゼルエル、そなたがいるのだ。」 ゼルエルは、膝をつけて頭を下にしていた。 「すいません、天軍の動向を知っているものに、アルテレンさんとフールさんを連れ去られてしまいました。」 「どこから、情報が洩れた。 まさか、貴様かルシファー!!!」 激怒したミカエルは、ルシファーを見た。 ルシファーは、何かを知っているのかため息を着いて言った。 「概ね合っているな。 この時間になっても私に七罪の一人も来ないとなれば天軍の動向を探っていたベルゼブブが二人を君らよりも先に連れて行ったのかも知れないな。 そして、今は白の塔から抜け出せずにいられるか。 フフフッ、まったくベルゼブブだったらどう攻略するか、楽しみだな。」 「ルシファー、やはり貴様が!!!」 ミカエルがルシファーに殴ろうと拳を振り上げたがゼルエルと他の天使達に抑えられた。 Now loading・・・ 「それでミカエル様は、大丈夫でしたか。」 ゼルエルは、天軍の兵士に言った。 「お疲れだったようで今はおやすみになられています。」 兵士は、そう報告してミカエルのところに戻って行った。 ゼルエルは、ルシファーに目を向けてため息をついて言った。 「ルシファーさん、あまりミカエル様を挑発させないで下さい。」 「ふむ、悪気はなかったが、私も余計な一言が多かったようだ。」 「ところでベルゼブブさんは、なんのために二人を連れ去ったのですか。」 それを聞いたルシファーは、アゴを手で擦り尋ねた。 「ふむ、では逆に質問をしよう。 なぜ、天軍はあの二人を追っているのか。 天軍は、何か知っているのではないのか。」 「天位議会と天軍のほとんどは信じていないが、私は、人の想像によってその存在が確証されたものの仕業だと思っている。 だから、私は半信半疑なミカエル様にも協力してもらい、そのものと関係の深い月読魔術士を追っていた。」 「フッ、力の天使もとうとう人間の妄想を信じたか。 ・・・おっとすまない。 ベルゼブブのことだったな。 彼女は、多分天軍の邪魔もあるが、目的は、あの子達を助けたかったんじゃないのか。」 「助けたかった?」 あれほど、天軍を苦しめている魔王からは想像もできない表現の仕方だった。 「かつて彼女は、冬の雨を司る豊穣の女神だった。 人の喜びや幸せが好きだった。 彼女は、更に人を喜ばせるために冬にも作物を豊穣させた。」 「それの何がまずいの。」 「かつて、冬は作物が多いものではなかった。 それを彼女が作物を豊穣させた、人はもう冬に備えて秋に蓄えなくてもいいと思った。 そこから季節の中でも実りの多い秋に人々は蓄えず、ひたすら食い尽くした。 だがそれも長く続かない、今まであった冬の豊穣は実際は、未来の冬に数年に一度ある豊穣させるエネルギーを使っていたのだ。 そして、その未来のエネルギーが枯渇し限界を迎え。 1566年間、冬に豊穣が訪れることがなかった。 最初の十年で人々は、貯めていないため大半が飢餓した。 彼女は、酷く後悔し、人々には悪魔と蔑まされた。 行き過ぎた善意が人の原罪の暴食を加速させたとして、彼女は豊穣の女神を過去に焼却して、戒めのためにも全ての人の原罪のひとつ暴食を背負い、今に至る。 だから、彼女は決して人が嫌いなわけではない。 むしろ今回は、その女神の名残が少し芽吹いたのかもしれないな。」 ルシファーは、白の塔を眺めて言った。 「・・・。」 彼の言葉にゼルエルは何も言えなかった。 だが、同時にこのような感情が思い浮かんだ。 (我ら天軍は、世界の調和だが七罪の目的とは何なのだ。)

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