ケプラー22b | 第16章 運河都市
印朱 凜

フィロメラ

 陸を走る船のように、舗装されていない道を砂煙を上げながら疾走するのは、スタリオン高機動車。  やがてテトラポットが山積みされたオーミハチマン市外郭に沿って走行し、厳重な防御装備と人員が配置されたメインゲート前まで到着した。 「オーミハチマン市か、本当に久しぶりよね」  マリオットちゃんが窓に顔を寄せながらシュレムに言った。 「そうね、見てみたいお店が思いつくだけでも、いくつかあるけど」  彼女らは時々KR線に乗ってオーミモリヤマ市からここまで買い物に来る事があるらしい。コロニー都市間の行き来って、結構自由なんだな。  オーミハチマン市は商人の街で、豪商と呼ばれる方達が幅を利かせている。食料品から医薬品、アパレル関係や武器、果ては自動車・バイクに男奴隷の取引まで、何でもござれの面白い街らしい。早く街の人々の生活を、この目で見てみたいな。  運河の街でもあるので、ゲートは船でしか通過できない。ビワ湖まで延びる美しい運河は、この街の経済と発展を支える重要な生命線であるが、同時に|装甲殻類《カルキノス》の侵入をも容易にしているのだ。運河の岸壁に沿って赤いケーブルが設置されており、電流を流す事によって大小のカルキノスを防いでいるらしい。 「この赤ケーブルに触れると僕はどうなるんだ?」  笑顔を絶やさないアディーに訊いてみる。 「普段は大丈夫ですが、防御時の最大パワーによっては人間でも黒こげになりますよ」  ひえっ! さらりと恐ろしい事を口にするなアディーは。  ゲートからオーミハチマン市内に入るには船か艀に乗らなければならないが、どこから乗るのだろう。 「あっ……あれが艀乗り場じゃないのかな?」  ブリュッケちゃんが指し示す方向には、一台のトラックと高級車を乗せた艀が桟橋に到着していたのだ。 「よっしゃあ、行くぞ。出発だ」  カクさんを屋根に乗せたスタリオンは、揺れる桟橋から艀へと無事に乗船できた。 「ひよ~! 今度の街はどんな世界が待っているのやら」  カクさんは、ご機嫌で屋根からゲートを眺めていたが、その姿を注意深く見守る目があった。  それは場違いとも思える高級車の後部座席からだった。地球製の古いモデルのレプリカかな? 四角いメッキのグリルに丸ライト四つ……シルバー塗装で趣味のいい車であった。

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