第百九十四話 絶体絶命からの救援

   一瞬。  ほんの一瞬の出来事だった。国王へ話しかけようと、まばたきをした瞬間。たったその一瞬で、真横にいたルルカが捕えられ、リファが肩口から胸のあたりまでバッサリ斬られていた。  フードを被った人影はルルカを串刺しにしたまま、リファの髪を掴み俺とジェイグから距離を取った。  「う……」  「ルルカ! リファ! くそ……!」  俺が駆け出そうとしたところで、フードをかぶった男が俺達に手を翳す。  「≪神経の楔≫」  「ぐ……!?」  「動けない!?」  芙蓉とティリアが叫び、俺も体を動かそうとするが、う、動か、ねぇ……!? 何だこりゃ、魔法か!? だったら……!  「ナルレア!」  <動いています! どうやら私には効かないみたいですね! ルルカ様とリファ様を放しなさい!>  「フッ……そう言われて素直に手放すヤツは居ないさ? いいのかい? このままこの子達の首を刎ねてトドメを刺してもいいんだがね?」  「う、うう……」  そう言ってルルカから刃を引き抜き、足元に居るリファの頭に突きつける。その直後、飛びかかろうとしたナルレアの動きが止まる。  <カケル様……!>  「すまん、ナルレア……今は動くな……」  「カ、カケルさ、ん……」  まずい、ルルカの顔が青白くなってきた……! 当然だが、出血が酷いせいだ。『還元の光』があればすぐに回復してやれるのに!  「カケルさん! メリーヌさんが!」  「師匠!? さっき倒れた音がしたのはまさか……!?」  首も動かない状態だが、ごほごほと師匠が咳き込む声が聞こえてくる。  「(ぐ、ぬかった……斬られるまでまるで気配を感じなかったわい……ル、ルルカにリファもやられたのじゃな……嫌な予感はこれじゃったか……こ、これで気付いてくれれば、よ、良いが……)≪爆裂轟弾≫!」  「メリーヌさん、そんな体で魔法を使ったら!?」  ドゴォォォン!!  どうやら師匠が放った魔法がどこかに着弾し、轟音が響き渡り、師匠がか細い声で呟いた。  「後は……任せるぞ……フフ、若返ってからお主らとの旅は楽しかったのう……ここまで、のよう――」  「おい師匠!? 嘘だろ!?」  「メリーヌさん!」    ◆ ◇ ◆  ――メリーヌの大魔法が放たれる少し前のユニオン――  「ごめんなさい! ウチの猫が飛び出しちゃって!」  「大丈夫。へっくんはこれくらいじゃへこたれない」  「チャーさん、こっちに来るの」  「にゃー……うずうずしてしまう……」  アニスがチャーさんをハニワから引きはがすと、ハニワは慌ててメガネをかけた女の子の肩へと避難した。そこへフェアレイターがクロウとアニスを迎えに席までやってくる。  「騒がしくして悪かったのう」  「がっはっは! 爺さんの孫か? ……って、あんたかなり腕が立つな?」  「さて、どうかな? お主は魔王か」  「おう、土刻の魔王フェルゼンとは俺のことだ。どうだい、いっちょ手合せしてくれねぇか?」  イスに座ってニヤリと笑う  「フェルゼンさん、いきなりは失礼ですよ!? 俺はグランツと言います。フェルゼンさんを除いた三人で燃える瞳というパーティを組んでいます」  「エリンです! あなた可愛いわね~無愛想なのはトレーネそっくりだけど」  エリンがアニスの髪の毛を撫でながらそう言うと、メガネの女の子も前に出てきて、チャコシルフィドを撫でながら口を開いた。  「実は私もそう思っていた。私はトレーネ、よろしく。こっちはハニワゴーレムのへっくん」  「~♪」  紹介されたへっくんこと、ヘレ・クヴァーレが肩の上で手を前にして丁寧なおじぎをする。  「これはどうもご丁寧に……私はアニス。で、こっちがクロウ君と猫のチャーさん」  「あ、ああ、クロウです。よろしく……ん? グランツ? 燃える瞳? どこかで聞いたような……」  「にゃー」  「~!?」  わざとらしく猫の鳴き声をだすチャコシルフィドの目はハニワを狙っていた。そこでクロウが何かを思い出し、大声を上げた。  「あー! 燃える瞳でグランツって、カケルの知り合いじゃなかったか!?」  「き、君! カケルさんを知っているのか!?」  「お、そうそう、そうだぜ! 俺達はカケルの知りあいだ! あいつは今どこにいる?」  「うーん、フェルゼンさんが言うとサギっぽく聞こえるのは何故かしら……」  エリンが苦笑しながら言うと、クロウが話を続ける。  「カケルは今、リファさん……お姫様が殺されたという噂を聞いてお城に行っているんだ。リファさんは死んでないことを言いにね。僕達はお留守番ってところさ」  「カケルはお城にいる! 兄貴、すぐ行こう、今行こう!」  トレーネが装備一式を手に取り、立ち上がるが、それをフェアレイターが諫める。  「悪いが今は止めてくれ。というか嫌でも出向くことになるじゃろうからそれまで待ってくれるか? とりあえ魔王と出会えたのは僥倖だった。嫌な予感がしておってな、城から姫殺しの誤解が解けただけで戻って来るとは思えないのじゃ」  「あなたは?」  「ん? そうか、自己紹介をしておらんかったか。わしの名はフェアレイター。破壊神の力の一部を司る者だ」  ザッ……!  その言葉を聞いて即座に構えるグランツとエリン、そしてトレーネ。だが、戦闘狂であるフェルゼンは動いていなかった。  「フェルゼンさん!」  「グランツよ、慌てるな。この爺さん、殺気の一つも出しちゃいないぜ? 訳ありか? いや、あんたよりも強いのが出てくる、か?」  「どうじゃろうな。わしの勘が厄介事が起こると告げておる――」  ドゴォォォン!!  「な、何だ今の轟音!?」  グランツが叫ぶと、フェアレイターが即座に外に出て、ユニオンの屋根に登った。音がした方を目を細めて確認し、外に出てきたクロウ達に声をかける。    「クロウ、アニス! それとカケルに縁がある者達よ! どうやら、悪い予感が当たったらしいわい。城へ急ぐぞ!」  「へへ、面白くなってきたじゃねぇか。カケルが居ると飽きないなやっぱ。グランツ、油断するなよ? 教えたことをやりゃあいい」  「……はい! 行きましょう!」  「アニス、乗れぃ!」  「うん」  フェアレイターの肩にアニスが乗り、そのまま駆け出すフェアレイター。クロウもローブを羽織ってその後を追いかけはじめる。  「何が来ても特訓の成果をするだけだ……!」  「カケル、やっと会える……! へっくん、頑張ろう」  「~!」  コクコクと頷き、土で作った剣と盾、そして兜を装備したヘレ・クヴァ―レがトレーネの頭へと移動する。通りを全力で走っている時、フェアレイタ―は別の場所から城に向かう二つの影を見つけた。  「(む、あれはもしや……さて、大事になってなければ良いが)」

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