Milk Shakies〔ミルクシェイキーズ〕 | 第4章 魅了スキルを持っている疑いのある男子と、魅了されているかもしれない女の子たち。
こにーびー!

第6話 Paint It Black!

 今日はアルバイト2日目。お昼になる少し前に、九ノ瀬社長が《《今日も》》、服を持ってきた。  今日はレイアー服ではなく、ケモミミパーカーだ。 「はい。拓郎君、万歳して!」 「あの、九ノ瀬社長。1人で着れますので…。」 「ふふふ。莉々、拓郎君だって、プライドはあるのよ。」 「だって…。拓郎君…。私の事は莉々でいいって言っているのに!」 「そんな…。言えませんよ…。」 「律の事は呼んでいるじゃない?」  ああ。どうしよう…。 僕は律さんをチラッとみた。律さんは微笑みながら、うなずく。 「えっと、莉々さん?」 「はい。莉々です。」  うひょー!この人ってこんなキャラだっけ? 「はい!」  律さんは パン!っと手を叩いた。 「それじゃ莉々。そろそろお昼だから、拓郎君は休ませます。中間試験も近いんだから、勉強をさせてあげてね。」 「そうかー。学生だもんね。拓郎君、わからないところがあったら聞いてね。私は 一応、国立大卒だからね。」  そう言って、莉々さんはお店の方に戻った。 「拓郎君、モテモテね。」 「そんな事…。無いですよ。」 「拓郎君は 気になる娘とかいるの?」 「…。まあ。ちょっと…。」  やだ!真っ赤になって! 「ごめんね、変なことを聞いて。拓郎君が、言える状態になったら、私にも教えてね。」 「…はい…。」  ◇ ◇ ◇  事務所に戻ってきた社長。  昨日から、社長は何かと拓郎の事を気にしている。私は意を決して、社長に問う。 「社長!私は拓郎が好きです!社長は私のライバルですか!?」 「はい。」  はぁ?何をぬけぬけと!? 「ん?あれ? はい!ライバルです!」  何で2回も言うんだ?この女は! 「でも、成美さんにはかなわないから、あきらめるわ。でも、お気に入りに思うことぐらい、いいでしょ?」 「何ですか?それ…。」 「だって、私がどんなに若作りしても、年の差は縮まらないわ。7つも年齢差があったらね…。さすがに、ドン引きでしょ?」 「それじゃ、あきらめてくれるんですか?あきらめるんですか?」 「もう、いいかしら?」 「拓郎は好きな娘がいます。でも、私はあきらめませんよ!」 「私も成美さんみたいに、彼を大好きになれと?」 「そこまでは言いません。」 「そうね。その件に関しては 考えておくわ。あと、これだけはお伝えしておきます。私はここの経営者で、今は仕事が楽しいの。恋愛の事を考えるのはその後《あと》かしら。」 「そうですか…。わかりました。からんでしまい、すみませんでした。」 「いいのよ。それと、一つ聞いてもいい?」 「はい。」 「拓郎君が、気になっている娘って、奈美ちゃんかしら?」 「斉藤をご存じですか?」 「ええ。うちの取引先のお嬢さん。でも、その会社は2~3日中に倒産するわ。律の会社、本部からの輸出規制をかけるの。それに、色々と明るみにでるわ。」 「えっ!?それじゃ、斉藤は?」 「あそこの社長は 奥さんと、離婚するわけ無いし。国外に逃げる事なんて、考えつかないだろうから…。あの家族は おしまいかもね。」 「そんな…。」 「今の話しは 別に内緒にしなくても、いいわよ。明日の昼頃にはニュースになることだし。」 「何で私に話したのですか?」 「そうね。私が、心のどこかで…。奈美ちゃんが、拓郎君の近くからいなくなればいい。と思ったからよ。私は醜い女なの。だから、拓郎君のことも、すぐにあきらめられるの。」 「言っていることが、矛盾だらけです…。」 「ええ。私はそういう女なの。」  ◇ ◇ ◇  翌日の放課後…。  さて。掃除も終わったから、生徒会室に行くか。  会長どうしたのかな?何だか、思い詰めていたけど。もしかして、会長を辞めたいのかな?生徒会長をやりながら、学年トップとか大変そうだしな…。でも、そんな相談を僕にする訳ないか。ははは…。  トントン…。 「失礼します。」  僕は生徒会室に入った。  誰もいない?どうしたんだろ?  とりあえず、会長が来るまで、勉強をしていよう。僕はテキストや参考書を開き、勉強を始めた。  それから、どの位の時間が経ったのだろう、気がつくと、下校時刻の鐘がなった。 「あれ?もう、そんな時間?」  そういえば、会長どうしたのかな?  すると、生徒会室のドアが開いた。 「は?石川?どうした?灯りがついていたから、来てみれば。」  生徒会顧問の野崎先生だ。 「ああ。すみません!先日、会長と偶然会いまして、話があるから、放課後来るように言われていたんです。それで、誰もいないから、試験勉強をしていました。」 「石川?お前、聞いていないのか?」 「何がですか?」 「斉藤のお父さんな、今日…。その…。」 「拓郎!ここにいたか!」  突然、成美さんが現れた。 「成美さん?どうしたの?」 「拓郎!斉藤は学校を辞めた!」 「父親が今朝、逮捕されたんだ…。」 「えっ?逮捕って?何で?でも、だからって、学校を辞めるの?」 「石川。斉藤は女子だぞ?そのくらい察してやれ。詳しいことは学年主任に聞かないとわからんが、海外に転校するみたいだ。」 「そんな!」  野崎先生の言葉に、僕は言葉を失った…。  思い詰めていたのは この事?  でも、そんな事を僕に相談されても、僕は一般人だし。僕には何もできないけど、相談はしてほしかったな…。  斉藤会長…。  もう一度、会いたかったな…。 「あー。石川…。すまんが、下校時刻だ。そろそろ、いいか?」  野崎先生が、珍しく優しい口調になっている。いつも、成美さんを怒鳴りつけているイメージなのに…。  実は気遣いのできる先生だったんだ…。 「はい。すぐに下校します。鍵をかけて、職員室に持っていきます。」 「あ、ああ。それじゃ、戸締まり、宜しくな。  高坂、石川の事を頼んだぞ。」 「ああ。任せろ。」 「敬語を使え!高坂!」 「はい…。」  野崎先生は 軽く、成美さんを怒鳴った。でも、笑顔で怒鳴っていたから、僕に気を使っているみたいだ。  何で、そんなに気を使ってくれるのかな? 「さあ。拓郎、帰ろう。少し、話したいことがあるんだ。」 「あ、うん。わかりました。帰りましょう。」  僕たちは 学校を後にした。  駅までの帰り道。揺れる電車の中。Suicaをあてる改札。駅から駐輪場迄の道のり。半夏生《はんげしょう》を過ぎたので、未だあたりは明るい。  駐輪場を出て、成美さんが言った。 「私に、ついてきて。」  言われるままに、成美さんの後を追う。ん?この道って。 「成美さん、どこに行くの?」 「いいから!」  何で、怒っているんだ?行き先を聞いただけなのに…。  あらかわ遊園の前を過ぎ、信号で停まる。 「バイト先?お給料日?」 「違う。給料はまだ先だ。」  成美さんはニコッとして言った。  そして…。 「さあ、着いた。律さんに、会ってきな。あの人は全てを知っているよ。明日から、中間試験だ。挑む前にスッキリしてこい!」  そう言って、成美さんは僕の背中を叩いた。  何で、律さんが知っているんだ? 不思議に思いながらも、僕はヴァレンツに入った。 「あら?いらっしゃい。明日から試験でしょ?どうしたのかしら?」 「えっと…。」  僕が口ごもっていると、律さんは外にいる成美さんを見た。 「そういうことね。そこに掛けて。」  そう言って、面接をしたテーブルに僕を座らせた。 「奈美ちゃんの事かな?」  律さんは真顔で僕に聞く。 「はい。」 「彼女の家の事はもう、知っているでしょ?」 「はい。」 「彼女の両親はね。悪魔に憑《つ》かれたの。お金という悪魔に。」 「憑かれたって…。」 「私の父が、社長を勤める会社と、奈美ちゃんのお父さんの会社はね、取引をしていたんだけど、一昨年辺りから、会計の不備があってね。一応、グループで査問会を開いて、調査をしていたの。結果は黒だった。」 「すみません、話がよくわからないです。」 「簡単に言うと、社員に給料を支払わない。不当な解雇、脱税。最悪なことに、売上金の着服。」 「そうだったんですか…。」 「はい、これ。」  そう言って、律さんは僕にメモをくれた。 「これは?」 「奈美ちゃんが、これから暮らす住所。情けないことに、斉藤夫妻のような親はたくさんいてね。実は私の実家でそういった子供たちを預かっているの。もちろん、ギブアンドテイクよ。うちの仕事を手伝ってもらって、教育ボランティアの方々に勉強も見てもらっている。実家にいる子供たちのほとんどが、大学に入ったわ。だから、心配しないで。だから、拓郎君が中間試験で、いい結果が出たら、奈美ちゃんに教えてあげたら?その前に!試験結果は私にも見せるのよ?」  律さんの言葉を聞いて、僕は涙が出てきた。 「はい!」 「泣かないの。男の子でしょ?」 「泣いて無いですよ。ザリガニは目からオシッコをするんです。これはオシッコです。」 「拓郎君はザリガニなの?」 「今はザリガニです。ありがとうガニ…。」 「ふふ。はいはい。それじゃ、帰って勉強しなさい。土曜日にまた来てね。莉々も拓郎君に、次は何を着せようか、悩んでいるわよ。」 「はい。ありがとうございます。僕、がんばります!」  僕はヴァレンツから出る。  外には成美さんと莉々さんがいる。 「あー!拓郎君、泣いてる!」  莉々さんは楽しそうに僕に言う。 「普通、こういう時に、そう言うこと言わないけど? 醜い女って本当だな…。」  成美さん、言い過ぎですよ? 「こーら!敬語を使え!」  五和さんも出てきた。 「すみません…。皆さんに気を使って頂いて…。僕、がんばります!まずは 明日からの中間試験で、学年一位を目指します!」 「おっ!?言ったわね!」  笑いながら言う五和さん。 「拓郎は入試の時に、トップで入学したからな!ガンバれよ!」 「マジか!?拓郎君、天才か!?」  莉々さんと、五和さんはハモった。 「さあ。スッキリしたところで、帰るぞ!そして、私にもわからないところを教えろ!」 《お前は先輩だろ!》  ↑  莉々、五和。心の声。  ◇ ◇ ◇  1週間後…。 「律さん。はい、見てください。」 「ん?なにかな? そうか、試験結果ね。ニコニコしちゃって、自信ありそうだね。って…Oh My God…。」 「アルバイトと勉強は別なんです。わかりましたか?」 「そうね…。よく頑張りました。失礼致しました。」 「それじゃ、お手紙を出してみたら?」  律さん!?ニコニコして!! 「僕の成績なんて見ても…。」  照れちゃって、可愛いんだから。 「それを決めるのは 奈美ちゃんじゃない?まあ、その話しは後にして、開店の準備ですよ。」 「はい。」  斉藤先輩、元気にしているかな…。  会いたいな…。  ◇ ◇ ◇  それから…。 「卒業生代表、石川拓郎。」 「はい!」  卒業か…。長いようで、短かった。  そういえば、入学式も僕が式辞をやるはずだったんだよな…。  急性虫垂炎で倒れたんだっけ…。  斉藤先輩、あれから手紙も途絶えた。1年後に会いましょうって…。  卒業式が終わり、僕たち卒業生は昇降口に集まった。  みんな、それぞれに携帯で、写真を撮っている。 「拓郎!」 「おう!太陽!李依《りえ》さんは?来てないの?」 「来ていたけど、今は律ちゃんと出掛けている。」 「へぇー。仲が良くていいな。」 「うん。最近は日向とも一緒に出掛けたりしているぜ。」 「スゲーな!」 「あと、夜は絶対に来いよ!オンリミットに6時な!それじゃ!」 「ああ。またあとで!」  僕は1人で帰る。3年間通った、通学路。3年間通学で使った、京浜東北線、田端駅と、駐輪場。 「卒業式だったのか?早いな、おめでとう。」  駐輪場の管理人さんだ。 「えへへ。ありがとうございます。次は大学生なので、あと、四年間宜しくお願い致します。」 「そうか!どこの大学だ?言いたくなかったらいいけど…。」 「東大です。」 「マジか!スゲーな!」 「えへへ。ありがとうございます。」  そして、帰宅…。  今日は 卒業式で、母さんも来ていた。仕事を休んだそうだ。  今頃寝ているかな?  僕が家に入ると…。 「卒業おめでとう、石川君。そして、入学もおめでとう!よく頑張りました。」 「斉藤先輩!?」 「律さんが連れてきてくれたのよ。」 「母さん?知っていたの?」 「私は高坂と話があるから、ちょっと上に行って来るけど、エロいことするなよ!」 「う、うるさい!早く行けって!」  母さんはそう言って成美さんの家に行った。 「石川君。実は私、今年から東大生です。もう、石川君の先輩じゃないよ。同級生だよ。  あと、あの日。呼び出したのに、ごめんなさい。」 「別に…。気にしてないです。」 「あのね。あの日、君に言えなかったこと。今、言ってもいいかな?」 「僕も斉藤先輩に、お話があります。」 「もう、先輩じゃないぞ。それに、これは歳上の私から言います。」 「はい…。それじゃ、お願いします。」  斉藤先輩は 軽く深呼吸をし、僕を見つめる。そして目を閉じ言った。 「私、斉藤奈美は 石川拓郎君の事を愛しています。初めて会った時から、優しい心を持った、君の事が大好きです。石川君の彼女にしてください。」 「そんな…。反則ですよ…。それは 僕から言いたかったのに…。えっと、その…。ありがとうございます。僕も斉藤奈美さんの事が大好きです。たぶんこの気持ちが、愛している気持ちなんだと思います。こちらこそ、宜しくお願い致します。  あと。いまだに、ご両親の事を 色々と話している人がいますが、気にしないで下さい。そんなものは僕が全部、黒く塗りつぶします!それでも、先輩が、奈美さんが、辛かったら、石川奈美になって下さい!」 「…はい…。ありがとう…。拓郎君…。こちらこそだよ。」 「うわっ!?こいつ!プロポーズまでしやがったぞ!?」 「はっ!?」  振り向くと、母さんと成美さんのお母さんが、玄関の奥にいた。 「初めまして、斉藤さん。成美の母よ。この娘が相手じゃ、うちの娘は無理だわ!」 「まあ。成美も悪い娘じゃないけどね。ちょっと中二病がね…。」 「我が名は ナツツバキ!だもんね!」  母さんたちは いような盛り上がりを見せている。 「ちょっと!何で、盗み聞きしてんだよ!!」  すると、母さんたちは 笑顔で答えた。 「当たり前じゃない!私たちもキュンキュンさせてよぉー!」

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この作品の評価

120pt

最後まで読みました! まずは完結までの執筆、お疲れ様でした。 沢山の登場人物たちが織り成す人間(恋愛)模様が、次に何が起こるのか予想がつかず、ハラハラドキドキで面白かったです。 最後は見事に大団円でしたね。

2019.11.19 09:50

皐月原 圭

2

「最終話 #2」読破しました。あまあまあまあまあま甘ですなぁ~b

「最終話 #1」読みました。激甘ですなぁ~

2019.10.25 15:07

皐月原 圭

2

我輩も最新話まで追いついたでありんす、惹きこまれる物語でいつも楽しませてもらっています、続きを楽しみにしていますb

最新話まで、ついに追いつきましたよ。 さて、キャンプは波乱の予感。どうなるのかな? 楽しみです。

2019.10.18 11:24

皐月原 圭

2

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