第6話  同胞の回想~宇宙生命体の誕生

全てのDNAのスイッチを入れるというのは、全てのDNAを一度に強烈に活性化させ、その潜在能力を劇的に発現進化させるというもの。 当時、科学的に可能なことだった。 でも、誰も実行しなかった。 どのような変化を、いえ、変貌を遂げるのか予測できなかったから・・・ ノアの荒廃で実行できる知識も設備も無くなりかけていたけれど、最後に残った五組の研究者夫婦が生き残りを賭けて実行した。 結果は、三組の夫婦が失敗して死亡し、残りの二組が成功した。 二組の夫婦の進化は、肉体がなくなるというものだった。 宇宙生命体の誕生だった。 宇宙生命体というのは、想念と意志だといえる。 想念は、ただ思うということじゃなくて、思うことを現実化できるというもの。 意志は生きる意志のことだ。 精神生命体ともいえる。 でも、私たちは普段自分たちのことを宇宙生命体と言っていた。 残った二組の夫婦の内、一方の夫婦はα、もう一方の夫婦はβと呼ばれた。 彼らは想念の現実化で肉体を持ち、若い時の姿になって子孫を作った。 別に肉体を持たなくても子孫は作れたんだけど、昔のままの姿の方が良かったのだろう。 ノアの環境も長い年月をかけて昔の姿を取り戻した。 でも、神様じゃないから完全な命を吹き込むことはできなかった。 植物も動物も繁殖はできなかったから、環境を維持するための修復は常に必要だった。 やがて、私たちは世代を重ねて五千万の人口を有するようになった。 私たちは、互いを同胞と呼び名前はなかった。 それでも、一人一人を認識出来たし何の不便もなかった。 名前が付けられたのは、αとβの二組の夫婦だけだった。 一種の尊敬の意味が込められていた。

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