ケプラー22b | 第14章 サバクオニヤドカリ
印朱 凜

ベリザーナ

 その時になって、ようやく電神ヴィマナが当空域に到着した。もっとも、地上にいる人間の目からは、まだ捉えきれていないはずだが。  上空から恐ろしいほどのスピードで影が飛来し、金切り音が次第に大きくなってくる。これでも電神ヴィマナのジェットエンジンは、ケプラー22bの大気組成から効率の良い燃焼状態を導き出すため、まだウォーミングアップの状態だった。 「痛たたた……ん? 何かしら、あれは」    スタリオンの車内から頭を出したシュレムは、口をぽかんと開けたままだ。  ライトグレイのブーメラン型の飛行物体が、両翼端から白い尾を曳きながら超高速で頭上を通過する。シュレムもアディーも地球製の最新鋭無人機である電神ヴィマナは、見たこともないオーバーテクノロジーの機体だろう。    僕は今、ナノテクを駆使したバイオデバイスの塊であるコンタクトレンズを通じて、電化心神――電神を完全コントロール下に置いている。(電神――以心伝心の意味もあり)  システム上、どうしても集中力を必要とし、僕自身の防御が疎かになってしまうのが最大の難点。しかも久々にコンタクト・ドライブシステムで操縦するものだから、勘が鈍っており余計に自分自身の安全確認と退避行動ができなくなる。 「オカダさん、ずっとこの場にいては危険だわ!」  助けに来たアディーが、婦警らしい毅然とした態度で僕を連れて逃げる。こんな状況なのに手を握られていると、何の前触れもなく昔の記憶が頭の中に去来してきた。  見れば見るほど彼女は昔付き合っていた人によく似ているなあ……デートした公園や映画館のスクリーンが、おぼろげなイメージとなって山びこのように脳内に響き渡る。  どうも脳がフル回転して、心の奥底に眠っていた記憶まで呼び覚ましているみたいだ。  左腕のヤドカリに挟まれた部分が出血して白いツナギ服の袖が朱色に染まってきた。ドクターはいないが看護師さん……シュレムがいてくれて助かったな。   マリオットちゃんやブリュッケちゃんも無事だったのか。窓から手を振っている二人が幻ではなく確かにはっきりと見えたのだ。 「オカダ君! 後ろ! 後ろ~!」 「オカダさん! 早く逃げてー!」  あれ……手を振ってたのは……ひょっとして注意喚起?

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