義父の過去と衝撃の墓地

  墓参りを終えて、その日のうちに名古屋へ一泊。実家の伊勢にお墓参りをするつもりだったのです。名古屋には友だちがいるので、夫を紹介して欲しいという友だちの要望にも応えるつもりでした。  名古屋で友だち3人とまずは雑談で盛り上がりました。それから、いよいよ夫の話がはじまります。 「なんで父親が死んだのが5ヶ月もわからなかったのかっていうと、父親が行方不明だったから」  と、夫は話し始めます。 「母と離婚した後に連絡を取ろうとしたんだけど、引っ越して連絡が付かなくなってしまったんだ。なにしろ、おれはあの人から虐待を受けててね。2歳頃かな。血だらけになったおれを抱えて、母が実家の広島まで逃げてきた。で、おれが高校生になったとき、あまりにも養育費を出さないから、母を代理人に立てて調停に持ち込んでね、お金をゲットしたわけ。そしたらすでに結婚していた父は、 「遠くの子どもより、身近な子どもの方がかわいい」  と言いやがったんだぜ。傷ついたよ」  簡単に笑いながら、さらりと言ってのけますが、父親を裁判に引きずり出して調停に持ち込むって、ただごとじゃありません。はじめてこの話を聞いたときは、ドン引きしてしまいましたし、まるでテレビドラマみたいな展開に、ほんとのこととはにわかには信じられない気分でした。  慣れたけど(笑) 「死んだあとに遺言執行人が、ガスを止めたり銀行で手続きしたりしていたし、こちらの住所を見つけなきゃならなかったしで、5ヶ月かかったわけだ」  遺言が効力を発生するのは、3ヶ月後だしね、と夫は結びました。    翌日、伊勢の墓参りに行きました。  午前8時頃、花屋もシャッターを開けたばかり。昨日ののこりの花をゲットして、霊園へ。するとどうでしょう!  わたしの両親の墓は、雑草のなかに埋もれているではありませんか!  草がボウボウと生い茂り、実家から株分けされた小さな木も、向かって右側が枯れてしまっています。左側の木は草の中で、息も絶え絶え、というふうでした。 「無縁仏だ」  夫は、ショックのあまりふらっとしています。  左の墓を見ると、きれいさっぱりに片付いています。実家の墓を守ると約束した妹は、なにをしているのでしょうか。  あとで詰問すると、「仕事で行けなかった」と釈明。お盆ぐらい休めるでしょ、と反論したら、「その時期はバイトしてた」  そこまで働かねば、やっていけないのか。  妹に、なにかが起こっている。でも、わたしはスルーすることにしました。  下手に関わったら、いっしょに地獄を見ることになりそうだったからです。  姉としての卑劣さ、人間性のなさ、臆病さに自己嫌悪を覚えながら、わたしは夫とともに広島へ戻っていきました。

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