ケプラー22b | 第13章 廃墟都市
印朱 凜

ロドペ

「ぎゃあぁ!」  叫び声が夜の静寂に響き渡る。  まだ熱いコーヒーを顔にぶっかけてやったのだ。 「何をするの! レディーの柔肌に!」 「やかましい! コッヘルの熱湯じゃなかっただけマシと思え!」 「寝たふりをしていたの? よくも私をだましたわね! ……という事はコーヒーを口にしていないな?」 「俺を甘く見るなよ、パリノー」 「一体どこで分かった?」  パリノーはコーヒーが滴る顔面を左腕で拭きながら、ピンクの下着姿のまま戦闘態勢でナイフを構えた。 「ケプラーシオマネキさんのおかげだな」 「……何、トチ狂った事を言ってるの、マジキチ?」 「君は自らをカルキノス研究者だと言っていたのに容赦なく殺していたね。生物学者はいくら襲われたからって研究対象を絶対に殺したりはしない」 「チッ! ……最初からか」 「パリノー! 君はデュアン総督が放った暗殺者だな」 「違うわ、刺客よ」 「同じこっちゃー!」    スケさんとカクさんが見回りからすぐに引き返してきた。 「何だ、何だ! 何の騒ぎだ?」  カクさんはエッチな下着姿のパリノーを凝視したのだ。 「うわわ! オカダ君、さすがに手が早すぎるよ! オイオイ、いくら欲求不満気味だと言っても」 「ちがいますがな」 「他の女の子から軽蔑されるぜ、『イヤーッ! 最低~!』って」 「ちがうっちゅーに!」  グダグダやっているうちにパリノーはスタリオンの方に行き、カミソリナイフでバイクを縛っているロープを切断した。  スケさんも攻撃に少し躊躇しているようだ。手にしたナイフを見たとしても、それは無理もない……。 「どうするの、オカダ君?」  パリノーはバイクのエンジンをかけて砂塵を舞い上がらせた。ある程度逃げる用意をしていたな。 「グッバイ、オカダ査察官。この次に会う時は、必ずこの手で殺してやる」  そう言い残すと彼女は、下着姿のままバイクで真っ暗闇の中を逃走した。持ち物はTバックに挟んだナイフ一本のみだ。 「あ~あ……あのままじゃケツが痛くなるし、寒いし、賊に襲われちゃうぞ」  カクさんは、まだパリノーの身の上を心配している。 「最初から身ぐるみ剥がされているって、どんな状況なんだ……」  僕は仲間に裏切られたショックと悲しみで、気の利いた台詞がついに出てこなかった。

ブックマーク

この作品の評価

1pt

Loading...