Part 23-5 Missing 行方不明

DoD-Pentagon Arlington County, Va. 20:15 午後8:15 バージニア州 アーリントン ペンタゴン 国防総省  部屋に銃声が広がりその残響が消え去っても誰も直ぐに動かなかった。顎《あご》を上げ冷やかに見下ろすローラ・ステージの視界の先にキンバリー中佐の引き攣《つ》った顔が見返し彼女の右手に握られたベレッタの銃口から硝煙がうっすらと流れ出していた。 「なんちゅうお嬢さんだ。まさかこいつを撃ち殺そうなどと──二発目を撃ちなさんなよ」  こぼしながらブリガム元大将がローラの右手首を押し退けていた手を放した。 「ジェネ──今、私は猛然と怒ってるの。競り合うバッファローみたく──撃たない約束なんて出来ない!」  椅子に座ったまま三人を唖然とした面持ちで見つめるジョゼフ・キンバリー中佐から眼を離さずに元大将はFBI捜査官を説得し続けた。 「ローラ、君の怒りが数百万の命を危険に曝した中佐の愚かな行動からだと理解しているが、こやつは公に裁かれなければならん。それにどうして中佐がテロに関わったと気がついたんじゃ?」  ブリガム元大将の言葉に中佐の頭の横奥の壁に穿《うが》たれた弾痕《だんこん》を見つめていたローラは頭《かぶり》振った。 「数百万?──私の怒りの根源は多くの命が危機に曝された事ではないわ──たった一つ──たったひとつの命──私が愛するこの世で唯一の肉親をほふり去ろうとしたこいつを絶対に許さないから!」  言った刹那ローラは再びキンバリー中佐の額に銃口を振り向けると引き金を引き絞った。部屋に射撃音が轟き壁に二つ目の孔が開いた。  ジョゼフ・キンバリー中佐は椅子から転がり落ち難を逃れていた。ローラの怒りに任せた殺人衝動を食い止めたのは、後ろから彼女を羽交い締めにしたソニー・カーチス上院議員だった。 「やめろ! ローラ! クリストファー、彼女から銃を!」  上院議員に言われ元大将がローラからベレッタを取り上げたその時、キンバリー中佐は怒鳴った。 「きさまらなんぞに邪魔立てはさせん!」  怒鳴りながら彼は素早く机の袖引き出しを開くとつかんだサービスピストルを振り上げセーフティを切り銃口をブリガム元大将に向け引き金を引いた。  その直前クリストファー・ブリガムは反射的にローラから取り上げた拳銃を机のデスクトップの先に見えている中佐の顔に向け振り向けていた。二つの銃口が火炎を吹き部屋に銃声が響き充満した。  元大将の左肩と怨恨《えんこん》ゆえに大虐殺を企てた中佐の額に銃創が開いたのは同時だった。ソニーの腕を振りほどいたローラがよろめいたブリガム元大将を横から抱きすくめ支えた。 「ジェネ──貴方が撃たなくても!」 「ローラ、君がこんな奴に手を下すことはなかったんだ。だが──」  ブリガムは拳銃を握った拳を左肩の傷に押し当て苦味走った面持ちで壁に残された血|飛沫《しぶき》を見つめた。 「──まずい事をしでかしてしまった。他に核爆弾の行方を知ってる者がいればいいのだが」  クリストファー・ブリガムはそう呟《つぶや》くとMPを呼ぶ為に机の電話へとローラに支えられながら歩いた。

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