カエルのくじ引き

 アラシとナギは張り切って台所へ向かいました。  ナギはキャベツをしんなり茹であげ、芯の厚いところをそいでおきました。その間に、アラシは玉ねぎのみじん切り。 「ああ、涙が出ちゃう」  ぼやきながら涙を拭くと、ボウルに玉ねぎ、合いびき肉、パン粉、卵、ナツメグ、塩、こしょうを入れて、手際よく混ぜていきます。  ねちょ、ねちょっ、みちょ、みちょっ。  ねちょ、ねちょっ、みちょ、みちょっ。  とても滑らかで、綺麗なタネです。それをナギが茹でたキャベツに乗せて、くるくるっと綺麗に巻き込んでいきました。あの小判の包みも綺麗でしたが、アラシたちのロールキャベツもそれはそれは綺麗に巻かれていきます。  ナギはトマトソースの支度をしながら、声をかけました。 「お兄ちゃん、当たりを忘れないでね」 「もちろんだよ」  アラシは最後のロールキャベツの中に小判を一枚ねじこみました。 「これでよし」  そしてトマトソースの入った鍋にロールキャベツを並べ、コトコト煮込みます。 「さあ、あとはお殿様が来るのを待つだけ」  一息ついたアラシに、ナギが言います。 「ねぇ、お殿様に肘置きと座布団を用意しなくていいのかしら?」 「いいんだよ。座布団はともかく、うちはお殿様だろうが王様だろうが、肘置きにもたれながらご飯を食べるお客さんなんて御免だからね」  アラシはけらけら笑い、「どんなお殿様だろう。ワクワクするね」と耳をパタつかせたのでした。  さて、約束の時間になりました。外から賑やかな歌声が近づいてきます。  ゲロゲロ、ゲゲゲッ、モーモー、ゲロロ。  ゲロゲロ、ゲゲゲッ、モーモー、ゲロロ。  年の初めのくじ引きを、しきり直しじゃ、ゲロゲロゲ。  誰が殿様になっても泣くでない、鳴いて祝えよ、ゲロゲロゲ。  歌が終わると、あのヒキガエルが扉を開けました。 「お殿様のおなり」  アラシとナギは思わず深いお辞儀をします。 「苦しゅうないぞ、面をあげよ」  目の前に立っていたのは、凛々しい顔をしたトノサマガエルでした。その後ろにはヒキガエルの他に、三匹のカエルがいます。片眼鏡をかけているのは俳句が得意なダルマガエル。腰に温度計をぶらさげているのは気象予報士のアマガエル。そして化粧回しをつけたお相撲さんのウシガエル。みんな、お殿様になりたいだけあって立派な顔つきでした。 「シダを踏み、猫のくじを、引きにきた」  ゆったりとした口調でダルマガエルが言います。 「100パーセントの確率で、今度こそ私がお殿様になるでしょう」  しれっと言うのはアマガエルです。 「なにを言うか。私だとも。もっとも、トノサマガエルがズルをしなければの話だ」  そう文句を言ったのは、ウシガエル。不満そうに「モー」と牛そっくりの鳴き声をあげました。  トノサマガエルは「やれやれ」と扇子をパタパタさせます。 「誰もズルなどしておらんというのに。困ったものじゃ」  けれど、他のカエルたちは口々に文句を言い、わあわあと喧嘩を始めました。 見かねたヒキガエルの忍者が止めに入ります。 「おやめください。さあ、席について。あとはアラシさんとナギさんにお任せしましょう」  ぴたりと喧嘩がやみ、ダルマガエルが「よかろう」と席に座りました。 「ここまできたんですから、誰がお殿様になっても恨みっこなしですよ」と、アマガエルも席につきます。 「もしズルをしたら上手投げをお見舞いするからな」と、ウシガエルが腰をおろしました。 「それでは、よろしく頼む」と丁寧にお辞儀をしたのはトノサマガエルでした。  全員が席についたのをみはからって、アラシとナギは大きなお盆を運んできました。そこにはトマトソースでじっくり煮込んだロールキャベツのお皿が四枚。それをテーブルの中央に置くと、アラシが言います。 「みなさん、ここにロールキャベツが四つあります。どうぞ、お好きな皿を選んでください」 「大きさは同じだな」と、ダルマガエル。 「トマトソースで真っ赤だし、目印のようなものはないですね」と、アマガエル。 「美味しそうな匂いだな」と、ウシガエル。  彼らは次々に好きな皿を取って自分の前に置きました。最後に残った一枚をトノサマガエルが手に取り、こう言いました。 「さあ、みんな、よく見ておくれ。君たちが選んでから、私は残った皿を取った。そして料理を作ったのはこの猫たちである。これはズルではないと言えるかな?」  三匹のカエルは「わかった」と口を揃えて頷きます。それを見届けると、ヒキガエルが「では、実食!」と高らかに声を張り上げました。カエルたちはロールキャベツにナイフを入れていきます。アラシとナギはドキドキしながら、その様子を見守っていました。

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この作品の評価

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すごく可愛らしいお話でした。 ねこのきょうだいや、カエルたちの様子が目に浮かぶようです。 擬音や、カエルたちの歌声も、ちょど良い感じで入ってきます。 『うみのねこ』で繰り広げられる物語を、もっと読んでみたいと思いました。 猫に小判にも思わず笑いました。すごい伏線ですね。 小判のチョーカーを首につけた猫のきょうだい。見てみたい! 絶対可愛い。 素敵なお話、ありがとうございました。

2019.08.04 09:51

観月

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