怪盗サバビアンコの冒険 | 怪盗サバビアンコ 第一章「白雪姫の林檎 前編」
月天(るあ)

怪盗サバビアンコの冒険 第二話

 新聞の一面を飾っているのは自分が出した招待状の話題――「白雪姫の林檎」であった。  血よりも深い赤と言う、「白雪姫の林檎」を奪う為には先ず白雪姫の世界に行かなければならない。  熱い熱いブラックコーヒーを飲み下すと身体をそれが通って行くのをはっきりと感じた。 「トレビアン」  お決まりの言葉をサバビアンコが吐いた所で、昨夜を共に過ごした恋人が現れた。  バスタオルで首から下を巻き隠したタコリーヌだ。  頭はタコだが、赤さはルビーの様で、足は美しい流線形である。  壁に寄り掛かり、その長い足を組んでいる。 「おはよう、サバビアンコ。今日も御機嫌ね」 「御機嫌に決まっているさ、タコリーヌ。君の美しい顔が朝から見られたんだから」  相変わらず御上手ね、とタコリーヌは苦笑を浮かべ、いや顔はタコなので分からないが兎も角、そんなような失笑の声を漏らし、テーブルの上の新聞に黒い目を落とした。 「ほら、やっぱり嘘ばかりじゃ無い」  タコリーヌの髪はタコの足であるから、ぬるぬると良く動く。その動きを見るのが、サバビアンコは好きであった。 「あなたが御機嫌なのは、この新聞の記事を見たからでしょう? あなたは大抵、自分が注目されてたら喜ぶんだから。目立ちたがりなのよ。怪盗じゃないみたい」 「一番近くで私を見ている君がそう言うのなら、きっとそうなのだろうね」 「何と言ってもあなたはそんな反応しかしないんだから」  実際、サバビアンコは己を顧みると、「君が言うならそうだ」とタコリーヌに対して返す事が多かった。  タコリーヌの意見が十中八九言い得ている事実もあったが、自分に対してどんな意見を言われても本当に気にならないから、と言う理由も大きい。  どんな批判をされても、どんな手放しの賛辞を受けても、サバビアンコの行動や思考が変化する事は無いからだ。  大抵人は根本的に変化しない生き物で、それこそ三つ子の魂百まで等と表現されるが、それは頭がまさにどう見てもサバであるサバビアンコにとっても同様なのだ。  依って、他人が自分に向ける目など正直何方でも良いのだった。

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