第1話

 皆さんの中にもサンドウィッチ伯爵の名を耳にした方は多数おられるだろう。サンドウィッチ伯爵はイギリスの伯爵位。イングランド・スコットランド合同前に叙位されたイングランド貴族であり、その名は領地とするケント州サンドウィッチに由来する。1660年にサー・エドワード・モンタギューが受爵されたことに始まる。  コンビニエンスストアなどでよく見かける商品のサンドイッチは4代伯の名にちなんだものとされている。彼は著名な政治家で海軍卿や北部担当国務大臣を務めた。また、ジェームズ・クックの探検航海を支援したことでも知られ、ハワイ諸島の旧名「サンドウィッチ諸島」や南太平洋のサウスサンドウィッチ諸島は彼を記念して名付けられたものである。  それに対してハンバーガー侯爵という人物はご存じだろうか。もちろんそのような侯爵位があるわけではない。それは後世の人々が付けたニックネームのようなものである。正式にはナルボンヌ侯爵ロナル・ド・メクドナルド。フランス海軍の提督である。彼の好物が固めて焼かれたひき肉と付け合わせの野菜を挟んだサンドイッチであり、のちにハンバーガーと呼ばれるものである。  フランス海軍は1776年にアメリカ独立戦争がイギリスとの間で始まると、アメリカ側を応援することになった。1船隊の指揮官となっていたド・メクドナルドは第一次ウェサン島海戦、1780年ドミニカ、セントルシア及び1781年のトバゴ島海戦などにも参加した。1781年9月チェサピーク湾での海戦でアメリカ合衆国は独立となったが、彼は不幸にも捕虜となってしまう。数ヵ月後帰国を許されたド・メクドナルドだったが軍法会議にかけられることとなった。彼はそこへの出廷を拒み、家族と数人の使用人とともにドイツへと逃亡する。海軍から追われる立場となった一行は旅芸人に扮しフランス国境を越える。  ハンブルグに落ち着いた一行は生活のため、ド・メクドナルドの好物の肉のサンドイッチを売る店を出す。それはハンブルグの労働者の間でたちまち人気料理となりヨーロッパで独自の発展を遂げていく。   18世紀より米国に移住したドイツ移民がもたらしたハンバーガーは薄く切ったバウエルンブロートを使用したものだったが、1904年米国セントルイスで開催されたセントルイス万国博覧会では丸いパンを使用したサンドイッチが発売され、今日のハンバーガーの原型がアメリカで誕生した。  現在大手ハンバーガーチェーンの一つが道化師をイメージキャラクターとして使用しているのは侯爵がドイツへの逃亡時道化師に扮していたことに由来する。                      民明書房刊「ハンバーガーの歴史」より  

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