ケプラー22b | 第2章 ファースト・コンタクト
印朱 凜

アンフィトリテ

 三人で走って病院の正面ロビーに逃げ込んだ。同時に頑丈なシャッターが下りたので、もうエビの大群は中まで入ってこれないはず。それでも数十匹のトビエビが院内に侵入して、天井や白壁に激突し羽をザラザラ鳴らしている。長年積もった埃が舞い散って降り注ぎ、思わずくしゃみが出てしまった。   僕は背中に入ったエビをつまみ出して羽をむしった。格好が地球のクルマエビにそっくりだ。フライにしてタルタルソースで食ったらイケるかもしれない。 「ありがとう、本当に助かったよ……?」    我に返ると、ロビーには小銃で武装した看護師さん達が集合していた。シュレムさんとマリオットちゃんはどこへ行っちゃったの?  いやいや、よく見ると……この病院の看護師達はビックリするほど綺麗だ。何だ何だ? ここの看護師は、アイドルグループか何かで構成されているのか?  金髪碧眼のスラブ系、目鼻立ちのはっきりした東南アジア系、人種は様々だが、共通しているのはモデルと見まがうばかりのスタイルに、女優のような美しく整った顔立ち。  おお、噂通り女ばかりの楽園なのか! 皆ウエストがコークボトルのように締まっており、ぴったりとした白衣の上からでもボリューム感満点のバストがうかがい知れる。……これは幻なのか! 長期間の宇宙飛行により、当分生きた人間には会っていない。ましてや若い女性なんて。僕の幻想が生み出した夢物語が形をなして現実に目の前に現れたというのか! 「何だ? この鼻息の荒い男は……」  ひときわ長身の看護師さんが、ゴミを見るような目で一瞥した後、そう吐き捨てるように言った。 「男のくせに正面玄関から堂々と、この病院に入ってくるとは信じられん……半殺しだ!」  おそらく主任さんと思われる方が僕の処置を決めて下さった。僕は傷を癒してくれるはずの看護師集団に代わる代わる銃床でタコ殴りにされ、フロアに叩きつけられた。それでもなお、無理して顔を起こすと……そこには白い美脚、美脚、美脚、パンチラ、美脚!  「ふげっ!」  ナースシューズで顔をキックされて、とどめに踏まれた。だが、なぜだろう……全然抵抗する気が起きない。むしろ、うら若き女性達から揉みくちゃにされて気分がいいぐらいだ。   こんな感覚初めてじゃ! 何かに目覚めそうじゃ! ……と鼻血の海の中に沈みつつ、僕は走馬灯のように思いを巡らせたのだ。

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