ケプラー22b | 第2章 ファースト・コンタクト
印朱 凜

テミス

 幸いにも遺体らしき物には遭遇しなかったが、無人街はひたすらに不気味だ。全く無音の世界というわけでもなく、風の音が人々の会話のざわめきのようにも聞こえる。  僕と二頭は、お互いにしょぼくれた顔を見合わせると一旦車に戻って、おままごとのような作戦会議を開いた。 「人がいそうな所……市役所の後、あのでかい病院にでも行ってみるか」 「駅向こうの総督府はちょっと遠いから後回しね」 「どうも人の匂いが途切れている。途中までは足取りがたどれるのだが……地下室への入口が沢山あって、追跡できるのはそこまでだな」  パンツと決別したカクさんは、急に有意義な情報と意見を述べるようになった。多分パンツの匂いで中枢神経が破壊され、再構築されたのだろう。 「皆が地下室にこもるのは、なぜだ?」  僕は首をひねって、二頭を眺めた。 「私達のことを恐れているのかしら」 「すっかりシャイになっちまったのさ!」 「とにかく、モリヤマ市役所に行ってみるか、出発するぞ!」    だが何ということだろう。地味な市役所らしい入口から中に入ると、あらゆる照明は消え、ここも無人、二階もまた無人。……ただし先程まで使われていた形跡があり、役所内は整理整頓されている。書類には書きかけの文字が走っているし、カップに注がれた茶色の飲み物は完全に冷めていなかった。 「まるでゴーストタウンだな。真っ昼間なのに墓場みてえに静かだ」    カクさんが匂いを盛んに嗅ぎながら続けてつぶやく。 「間違いなく誰かいたと思うぜ。どこにかくれんぼしてんだか。ここにある食べ物……メロンパン? なんか生々しくて腐ってなんかないぞ」 「とにかく、この辺りの人を捜しに行きましょう」    スケさんが耳をそばだてる。人工のアニマロイドだが獣の勘が役に立つ場面なのか。  市役所受付には地下に続くと見られる謎の白い強化扉が壁面に存在していたが、押してもビクともしない。スイッチなど見当たらないし、無理矢理こじ開けるのは後日にしよう。  ……ケプラー22b開拓移民、中でも8万人のオーミモリヤマ市民は無事なのだろうか。衛星軌道上からは、確かに人々が生活しているのが確認できていたのに。

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