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 宿舎側の犠牲者は、四名いた。  その全員が親戚縁者の類を持たない、天涯孤独のひとびとだった。そういう人員は全員置いて行ったのだと、エクリールは言っていた。  つまりは、決死隊だ。  有事の際にはおまえたちが命を捨てて王女を守れと、彼は言外の命を下したのである。それを批難する権利など、守られた側のわたしにありはしない。  けれどもクロイツは思うところが山ほどあったようで、ぶちぶち文句を垂れながら、雪掻きの終わった領主邸の跡に水を撒いていた。よく晴れた葬儀の朝、水は鏡のように凍った。  眩耀《げんよう》に隻眼を細めた男の前に現れた獣は、白の薄衣《うすぎぬ》をまとっている。  あるじに向けて叩きつけるように靴を脱ぎ捨てた彼は、雪花石膏の爪先で以て薄氷《うすらい》を踏んだ。  にわかにしゃんらと鈴が鳴る。咲き誇る前の水晶花の蕾を摘み取って作った、透明な鈴の音だった。  ――僕らが崇める竜との争いの末、水底《みなぞこ》へ沈められた|貝の都《イェールーシャ》。かの都はそもそも、眠りのまじないのために花を咲かせているのではない。在りし日は数々の玉で飾られていたというかの都は、今なお死した民の怨み辛みの声を水面から吐き出し続けている。  それが形を成したものが、銀の枝に咲く水晶の花の正体だ。  ゆえに、竜は件の花を見ることを喜ぶ。それを捧げる者には、貝の都の民が望んでもなお得ることのできない、おだやかな眠りを与えてくれる  要するに、僕らの国の主人は性格が悪いのだ。  それを飾って踊る元神官見習いは、たぶん竜と同じくらい性格が捻じ曲がっている。だから彼はあの日の四人をただ見送るのではなく、みずから送りに行ったのだろう。  わたしは、彼らのための葬列に加わることはなかった。  氷上に踊る獣の姿を見下ろして、ただ黙礼を手向けることだけしか許されていない。身分を詳《つまび》らかにすることのできない者は、軍葬に参加することができないから。  ――彼らへの献花は、アマリエが買って出てくれた。

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