ケプラー22b | 第1章 査察団の到着
印朱 凜

ジュノー

「ところでオカダ君、最近分かったことなのですが、あなたに付けてもらった私の名前……スケさんって男の名前らしいじゃないですか!」    僕が苦笑していると、ナビゲーター席のカクさんが助けてくれた。 「でもスケバンとかスケコマシとか女性を表す言葉でもあるんだぜ」    カクさんは美しいオオカミの姿をした雄のアニマロイドで、見た目とは裏腹にお調子者だ。銀色の胴体から伸びる四肢の骨格も、犬とは比べ物にならないほど太く強靭。彼もスケさんと同じシリーズの新型アニマロイドで、人間以上の容量を誇る人工頭脳を備えている。  「噂によると植民惑星の移民の間には、なぜか男の子が生まれないそうだ……数百万人の乙女たちが男も知らずに絶滅の危機に瀕しているらしいぜ! よかったね、オカダ君! 未曾有のモテ期到来だな。このスケベ野郎! それが目的だったんだろう?」 「やかましいわ!」 「うーん、受精すると女の子になるX精子は、男の子になるY精子より重く酸性に強く寿命が長いって言うけど……ケプラー22bにおける何の因子が悪影響をおよぼしているのかしら?」 「何だろう、地球と異なるもの……重力? それとも大気組成? 月経を狂わせる自転・公転周期あたりかな」 「人間の適応力は優れてはいるけど、急に進化はできないということね」 「|医者《ドクター》でもないのに分からないよ、オカダ君。女子高状態でも俺は大歓迎!」    最後に人間と会話したのは、90日以上前……月面空間固定型ワームホールゲート通過前のことになるのか。だが長期の閉鎖空間における生活においても、全く寂しさを感じさせないのは、このスケ・カクコンビのおかげとも言える。  宇宙が舞台の過酷なミッションにおいて、二頭は欠かすことができない心強いパートナーなのだ。

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