役者たち

どこかの街のどこかの路地裏……(そんな目をしなくてもいいじゃないか、そうとしか僕も聞かされてないんだから)「sabotage」の小さな看板と一緒に「サボタージュ」はあったんだって。マスターは三十後半くらいの、背の高い人でね(ああ、男性だったさ、僕と違って整った顏のね……お世辞はいいから)、カラカラって音のする、あの喫茶店の扉を開けると、必ず彼がちょっと目を細めて迎えてくれるんだそうだ。店はかなり狭くて、カウンターに|丸椅子《スツール》が七つくらいと、テーブルは三つだけ。それに、カウンターの奥の方にある椅子二つはだいたいいつも悪魔と天使が座ってるから、実質八席しかないってわけだ。 ……まあそう急がないで、彼らの話は今からするさ。 「悪魔」は二十二、三の可愛い感じの女の子だった。そんな見た目だから、「天使のような悪魔」なんて呼ばれてたんだって。でも「悪魔」って呼ばれるからには、まあそれなりの理由があるわけじゃないかーー簡単に言うとね、悪魔を動かすのはいつも金だったんだよ。金がすべての行動動機というわけなんだ。そんな感じだから、支払わなきゃなんない報酬がべらぼうに高いんだよ。五千万なんてまだいい方で、一億とか、十億とか、まともな金銭感覚なんてもうないんだな。それでも彼女の仕事が「上質」だからみんな寄ってくるんだって。 それで「天使」の方はどうかっていうと、こっちもまだ若い、二十代の男でね。この人は悪魔の逆、「悪魔のような天使」だった。着てるのはいつも黒のコートで、髪も染めずに、つまりは全身真っ黒だったから。でも彼は金を沢山積まなくても仕事に応じてくれた。しかも依頼した人を最後まで救済しようとしてくれるんだ。だから「天使」ってわけさ。 そう、さっき話したマスターは医者でもあるんだ。まあ、大抵の客は知らないで帰ってくみたいだけど、ね。 ……結局彼らが何してるかってことを忘れてたよ。 悪魔はナイフで、天使は銃で戦う。 彼らは殺し屋だよ。それもこの上なく優秀な……。

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