1-12 学芸会

のぼるが小学5年生の時の事である。たしか担任は新井先生と言い、京葉道路の小松川警察署のそばの釣り道具店の息子さんだったと思う。 ある雨の日、講堂ではなく自分達の教室で机、椅子を片付けて、そこで臨時の学芸会をやる事になった。その日は私の演出で国定忠治をやったと思う。 同級生の五郎蔵君がなかなかの役者だった。八百屋のお父さんの仕込みらしく、雨で体操の休みの時などには浪曲なんかを聞かせてくれた。 そんな訳で忠治はもちろん五郎蔵ちゃん。 舞台は、捕り方が忠治を囲んで捕まえる所だった。最初の捕り方である私は切られずに引っこんでいき、浪人になりもう一度出てきて忠治と渡りあうシナリオになっていた。 芝居が始まった。ところが、この忠治親分は、いきなり私を切り倒すと返す刀でそばにいた先生迄切ってしまった。 その後もバッタバッタと捕り方を切り続け、挙げ句の果てに左手で刀を付き上げ 「赤城の山も…」と始めてしまったのである。 あとで五郎蔵ちゃんに聞いたが、 「俺、知らねえよ、自然にああなっちゃったんだよ」だって。

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