ぼっち姫は目立ちたくない! | 第七章:ぼっちな姫と新たな魔王。
monaka

ぼっち姫、元魔王として。

 眼下では、足の速いウルフ系や足が長い蜘蛛みたいなタイプの魔物などが森を抜け里に迫っていた。  ナーリアが近くの家の屋根から確実に一匹ずつ仕留めていく。  手が回らず里の入り口まで到達してしまった魔物達はライゴスとデュクシが魔法剣、魔法斧を駆使しながら殲滅する。  魔物達の速度に差があったのは私達にとっては運がよかった。  もし一斉にやってきて里を囲まれてたらもっと面倒な事になってたと思う。  ショコラは既に姿が見えない。  多分森の中でザクザク暗殺してるんだろうね。おっかないわー。  アシュリーは里のど真ん中に突っ立ったまま動かない。  きっとまだ自分の出番じゃないと思ってるんだろう。  アシュリーが動くのはもっと魔物達が大挙してきた頃だと思うしこれでいい。  どんどん里の前に魔物の死骸が積み上げられていく。  こいつらも自分の意志で戦ってるわけじゃないんだろうなぁ。  そう考えるとちょっとやるせないけど、こっちだって生きる為には戦わなきゃいけない。  私はめりにゃんの手を握る手にぎゅっと力を入れて、自分の番を待った。  その時、森の中で大きな爆発が起きる。  でも、炸裂音というよりはなんだか、ばふっ!! っていう妙な重たい音が響いた。  それと共に、魔物達が向かってきているであろう道筋を包み込むようにピンク色の煙がもわもわっと広がった。 「な、なんじゃあれは……?」  ……まぁ、ショコラだろうなぁ。  里からは結構距離を取ってるから大丈夫だと思うんだけど、嫌な色。  どんな効果があるのかは……森を飛び出してきた魔物を見たら一目瞭然だった。 「めりにゃん。見ちゃダメ」  飛び出してきたウェアウルフ二体が、何やらフラフラとその場でクルクル回ったかと思うと、お互いに飛び掛かった。  同士討ち、って流れなら、酷い効果だけど有効的な攻撃だなって納得できた。  でも、違う。  ウェアウルフ二体が今争っているのは……。  どっちが上になるか  を争ってる。 「……せ、セスティ……あれ、何しとるんじゃ?」 「見ちゃダメだって。めりにゃんは知らなくてもいい事だよ」  そして、他にも次々と魔物達が飛び出してきて、あろうことか異種間同士でもおっぱじめちゃった。  魔物との戦争って、こんな始まりでいいの?  森の中でふんぞり返ったショコラのどや顔が目に浮かぶ。  お姉ちゃんはそんなふうに育てた覚えはありませんよ。  まぁ育てた事自体ないんだけどさ。  デュクシやライゴス達もどうしていいか分からなくなって困惑してる。  ナーリアも、攻め込んでくる手が止まってしまっている魔物達を相手にどう動くべきか迷ってる。  ショコラよ、これは逆に悪手じゃないのか?  しかし、そんな中一人が動き出す。 「……目の前でイチャコラしてんじゃねぇー!!」  ちゅどーん!!  里の前にわらわらと集まっておっぱじめていた魔物達を纏めて魔法で吹き飛ばした。  勿論、アシュリーだ。 「あーもうイライラする! なんなのよこの戦いは……ッ!!」  うん、気持ちは分かる。 「ほらアンタらもぼけーっとしてないで仕事しなさい仕事を!!」 「す、すいません!」 「ごめんなさいっす!」 「すまぬのである!」 「……緊張感のない奴等だなぁ」  五万の軍勢とたった七人で立ち向かおうって時にさ、おバカすぎて笑えてくる。  しかし、こんな大量虐殺みたいになってる状況を見てめりにゃんは冷静でいられるのかな?  めりにゃんを見つめる私の目を見て、何を心配してるのか悟っためりにゃんは 「はははっ、セスティの仲間達はみんな面白いのう♪ 儂は、もう魔物の王ではないから、ちゃんと割り切っておるよ。今の儂はセスティの仲間じゃ。邪魔する奴等は敵じゃ」  と言って少し寂しそうに笑った。 「……セスティ、儂らが戦う前に一つだけやっておきたい事があるんじゃがいいかのう?」 「いいよ。めりにゃんのやりたいようにして」  めりにゃんは「ありがとう」と笑いながら、「|爆音通信波《メガフォンスピーカー》」と、魔法を唱える。 『あーあー。聞こえるかのう?』  すると、となりでめりにゃんが普通の音量で喋っているにも関わらず、エルフの森全域に響いているのではないかという程の音量でどこからか声が響いた。  声を広範囲に伝える魔法……? 『皆の者、よく聞け。我が名はヒルデガルダ・メリニャン! 以前おぬしらの王だった者じゃ』  めりにゃんの声に空の魔物達の動きが止まる。  地上の魔物達は……なんていうかそれどころじゃないみたい。 『おぬしらも知っている通り、儂はこれでも元魔王。しかも今は元の力を取り戻しておる。この意味が分かるな? お前らが束になってかかって来ようとけっして勝てぬ相手だと知れ』  空を飛ぶ魔物達がざわざわし始め、隊列が微妙に崩れていく。 『じゃがおぬしらも今の魔王に命じられて来ているのであろう? 板挟みは辛いじゃろうなぁ。 しかし儂は容赦はせんぞ。今は訳有っておぬしらの敵じゃ。邪魔するのなら皆殺しじゃ』  めりにゃんは、きっと少しでもこれで戦いから身を引く者が出てほしいという気持ちでやってるんだろう。  でも、あいつらも命がけだと思うしきっとこれで引く奴は少ないんだろうなぁ。 『儂も鬼では無い。一応救いは残してやるのじゃ。ここで戦線を離脱する者には手を出さぬ。それと、ここに幹部が何人居るか知らぬがその首輪……儂等は無力化出来る。戦う気が無いのであれば早めに申し出よ。さもなくば、敵意有りと見なして容赦はせぬ。五分で決めよ。儂からは以上じゃ!』  空の魔物はさらに戸惑い、地上の魔物達もあの煙を逃れた者や、効果が切れた者達がめりにゃんの言葉に困惑している。  そして……五分が経過した。 「……誰も、おらぬか」 「めりにゃん……」  めりにゃんは最後に、元魔王として、この場にいる魔物全てに慈悲を与えた。  だけど、それに応える奴は誰も居なかった。 「セスティ。時間を取らせてすまんかったのう。しかしもう、これで……」  めりにゃんの寂しそうな目が、決意の瞳に変わる。 「覚悟完了じゃ」

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この作品の評価

148pt

すごい。ポンコツ2人が頑張ってる(笑)

2019.03.20 01:14

月愛

1

めりにゃん可愛い…!

2019.03.19 06:21

御園

1

設定が斬新で面白いです! 姫がだんだん呪いで…っていうのが、文体が変わる事で分かるのいいですね。 応援してます!

2019.03.14 01:04

御園

1

設定がとても面白いです。 主役の姫が置かれている状況、こういうアイディアはちょっと見た事がないですね。 まだ途中ですが楽しく読ませてもらってます。頑張って下さい(`・ω・´)

2019.03.05 17:57

月愛

1

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