ベルト対ティラノサウルス 開戦

 それは闘技場建設時に偶然発見されたモノ。  地面に埋まっていた生物の骨。ほとんど石化していた骨だ  しかし、なんの骨か?  既存のモンスターと比較しても謎。  正体不明の生物。  それの言葉に研究者はそそられる。  世界中から魔物研究の専門家たちが集まり、大掛かりなプロジェクトが開始された。  まず石化を解く魔法が施される。  土煙色だった骨は白く輝きを取り戻す。  続いて肉だ。食用の肉が骨の周囲に置かれ、魔法使いたちの詠唱が行われる。  禁忌である蘇生魔術。  膨大な魔力と資産をつぎ込んでも成功率は高くない。  失敗し、不死属性のモンスターを生み出す確率は9割。  しかし、それでも、構わないという研究者や魔法使いたち……つまりは探求者たちの総意であった。  そして、それは成った。  歓喜に沸く探求者たち。だが強大な生物はそれを食料だと判断した。  そして、その巨体は暴虐の限りを尽くさんと捕食を開始した。  体長12メートル 体重7トン   咬筋力……獲物を噛み切る力は4トン。  人の骨など容易に噛み砕く。  さらに、その巨体でありながら走る速度はおよそ40キロ。  彼の名前はティラノサウルス。最強の肉食恐竜。   ――――もう誰も逃げられない。  ・・・  ・・・・・・  ・・・・・・・・・  「よう、思ったよりも元気そうじゃないか」  試合直後の控え室。  簡易的な治療を終え、闘技場を後にしようとする直前だった。  キング・レオンが尋ねてきたのだ。  「試合直後の闘技者への嫌味か?」  「当たり前だろ?」  ベルトとレオン、2人共声を殺して笑い合う。  「それで、なんの用件だ?」とベルト。  「そうだな。実は次の対戦相手が決まった。恐竜だ」  「恐竜?」とベルトは眉を顰める。  「知らないのは当たり前だ。人工娯楽都市オリガスの秘中の秘だから」  「……秘中の秘なのに公開で戦うのか?」  「そうさ。この都市では娯楽が最優先だからな」  くっくっくっ……とレオンは笑う。  「ちなみに次の戦いでは武装も解禁だ。好きなものを使えばいい」  「それはサウザウンド・オブ・ダガーも、毒も使用可能という事か?」  「無論」  「つまり、それほどの相手という事か?」  「無論」  「お前よりも強いのか?」   「……」とレオンは一瞬の沈黙。そのあと――――  「流石にそれはない」と笑って見せた。   闘技場は人と人が戦うだけの場所ではない。  武装した人間が獰猛なモンスターと戦う事もある。  それどころか会場は|戦車《チェリオット》のレース会場になったり、水を溜めて船上戦の再現を行うこともある。  そして、人間と恐竜の戦いも行われる。  ―――1週間後――――  僅か1週間後、本人も自覚しない深淵の疲労とダメージは完全に抜け去っていない。  それでも試合は強行され、ベルトには拒否権はない。  ……いや、むしろ望むところなのだ。  前回とは違い、最初にベルトが会場に姿を見せる。  この戦いはベルトが格下だと運営の興行主たちの判断である。  そして、それは来た。  ドタドタと奇妙な足音。  その足音と同じリズムで大地が揺れる。  そして、その巨体は姿を現せた。   恐竜 ティラノサウルスである。

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