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「そうですか……」 そう言ったきり、中野先生はため息をついて沈黙する。顔に刻まれたしわが、深くなったように見えた。 館長室。応接セットに腰を落ち着けて、僕らは向かい合っていた。 「これ、問題になる前に何とかした方がいいと思いますよ」 僕は念を押してみた。 「……しかし、彼は町長はじめ三役には随分気にいられていますからね」 先生は眉根を寄せる。 「そりゃ、あの人は口八丁手八丁ですから」 そう。彼の口は本当によく回る。だからいつも僕らが文句をつけようとしても、何だかんだでうまくかわされてしまうのだ。それは確かに彼の才能と言えるかもしれない。 「そうですね」先生はうなずくと、表情を緩める。「ですが、そういう人間は得てして中身がなかったりするものですからね。分かりました。少し彼と話をしてみます。もちろん君から聞いた、なんて言いませんよ」 「……ありがとうございます」僕は頭を下げた。 ---

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