キング・レオンという男

 近年、魔族との戦いによって急成長を遂げた情報伝達魔法。  戦いが終わった後にも情報伝達能力は高まり、ついには個人が情報を共有し合う魔法が生まれた。  しかし、情報過多の時代になっても埋もれた情報というものも存在している。  例えば――――  魔王を討伐した勇者パーティ。  その名誉を称えられ全員がSSSランク冒険者となっている。  そのメンバーは勇者であるカムイを代表に、マシロ、アルデバラン、シンラ……そしてベルトの5人。  そう世間では信じられている。だが、それらは事実ではない。   勇者カムイが魔王シナトラを討伐するまで長旅でパーティのメンバーは幾度もなく入れ替わっている。  その多くが旅の最中に命を落とした者が占めている。  他にも、目的が一致したために勇者たちと旅を共にした者。  途中で裏切り、魔王の配下になった者。  逆にベルトのように敵から味方になった者。  そして、闘技者ファイター キング・レオン。  彼は、旅の最中にやもなくパーティから離脱した人間の1人だった。  「飲めよ」と瓶を地面に滑らせてベルトに渡した。  「安心しろ。毒は入ってないからよ」とレオンは笑った。  ベルトはあらゆる毒を無効化する体なのは当然知っている。  酒を受け取ったベルトは、そのまま口に運び、のどを潤した。  「……娘さんは?」とベルト。  「あぁ、逝ったよ。間に合わなかった」とレオンは返した。  「そうか……」とそれ以上、言葉は見つからなかった。  「時折、思うよ。あのまま旅を続けていたら、この後悔は別のモノに変わっていたのか……ってな。お前はどうだ? ベルト? 旅を終えたお前に後悔はあるか?」  「……そうだな」とベルトは考える。  「俺は最愛の人を失った怒りを向けるための旅だった。だが、復讐を遂げても後悔は残ったさ」  「そうか」  「そうだ。けど……」  「けど? なんだ?」  「けれども、気がつけば、あそこが俺の場所になっていた。だから……」  だから、『呪詛』に全身を犯され、痛みと苦しみに襲われながらも、こだわり続けた。  勇者パーティの一員であることをこだわり続けていたのだ。  それは言葉に出せぬ思い。  しかし、その意図は言外に伝わったようだった。  「……そうか。やり遂げても後悔は残るのか」  気がつけば地面に胡坐をかいて座っていたベルト。  今度は、レオンに酒を渡す。  それをレオンは一気に飲み干した。  2人は窓から広がる星空を見ていた。  野営をして、2人で酒を酌み交わす。あの時に戻ったかのような感覚。  しかし、それは錯覚に過ぎなかった。  「今、私の立場はこの都市の代表だ」  レオンの言葉にベルトは少しだけ驚いた。  「お前が? そりゃ凄いな」  「凄くはないさ。この都市で闘技者として名を上げたからな。祭り上げられたのさ」  「代表なら、俺たちに第五迷宮の調査をやらせてもらえないか?」  歴史の層が薄いとは言え、都市の神事を行う場所である。  ただのコネで許可など降りるわけもなく――――  「あぁ、いいぜ」と予想外の返事が返ってきた。  「条件は闘技者として勝ち抜く事だ」  「だが……それは……」  「謙遜するなよ。手を合わせればわかる。お前、対闘技者用の鍛錬を積んでいるだろ?」  「――――ッッッ!?」とベルトは驚きを見せる  「あの時より、遥かに強くなっている」  それからレオンはこう付け加える。  「あの時の戦い、怖かったのは私も同じだ。一瞬の油断が死を招く。この場所でもアレほど狂気に身を置いた戦いは味わえなかった。だから――――」     レオンは歩いて部屋から出て行く。その最後に――――  「もしかしたら私はお前に殺されたいのかもしれないな」

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