6.たまらないシチュエーション

 割と大勢で話している時にですね、なんか不意に自分の話しを周りが黙って聞いててドキッとすることってありませんか?  それでがんばって話し続けるんですけど、みんなは「あはは」とか「へー」とかぐらいの相槌なのに一人だけ何故かツボに入っちゃってお腹を抱えて笑ってくれることってありませんか?  僕はあの状況がたまらなく好きなんです。  特に笑ってくれた人がそんなに親しくない間柄だったら最高。  それが女の子だったらもう僕の心は射抜かれています。  あっ、あの人笑ってくれているって思ったが最後、周りの友人や話の流れはそこそこに捨て置いて、笑ってくれた人にクリティカルヒットさせる方向に全力で舵をきります。  顔は固定したままで視線だけを動かしてその人を観察してツボを捉え、あわよくば笑い死にさせてやろうという勢いでわき道を掘り下げたり、テンドンを繰り返したりします。  その人が周りにひかれるほど笑ってくれた時の快感といったら……。  内心は今にも踊りだしそうなくらいに暴れているんですが、全体の反応は微妙なので、僕もクールに「まあ、そんなに面白い話ではないけどねっ」みたいな顔をします。  笑ってくれていた人もそんな空気や周りの反応を見て正気を取り戻したかのように呼吸を整えるのです。    そして、話題が次に向かったり、その場が解散しようとしたその時、僕はその人にだけ聞こえるぐらいの音量でテンドンするのです。  これが僕の幸せな瞬間。  同じようなシチュエーションで最も素晴らしいのはファミレスやバスの中なんかで友人と話している時に、確実にあの人こっちの話を聞いて今|くすり《・・・》としたなって場面とか。  今度の場合は赤の他人なので、目の前の友人は当然のように知っている状況説明とか、前に友人には話したはずの関連するエピソードとかをわざわざ笑ってくれた人のために行います。  その人がこっちにばれない様に声を抑えて体を震わせてくれたらもう最高。  その日の帰り道なんかは自分の誇らしさと充実感で胸がいっぱいです。  寝る前は逐一話した内容を思い返しちゃいます。  注意点は一つだけ。  他人の場合はさておき、最初のシチュエーションの知人の場合、次に会った時なんかに同じ話をすることは絶対にやめましょう。  真顔で「はっ?」って言われます。

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この作品の評価

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なんか風変わりな友達のおしゃべりを聞いているみたいな、不思議な感覚の文体が好き。

2019.06.11 19:34

リトル & とりぃ

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