30階層主 撃破

 決して狭くない通路。そこにトータスゴーレムはいた。  幸いにも、まだ、こちらを認識していない。   「ならば先手必勝――――≪|魂喰い《ソウルイーター》≫」  放つのは、鉄すら切り裂く魔法の斬撃。  トータスゴーレムの胸元に吸い込まれるように向かい、その装甲に傷を刻む。  だが、固い。  そして、攻撃を受けたトータスゴーレムは外敵を認識した。  その瞳に赤い光が爛々と灯る。 対峙した、その体は――――  「デカイなぁ」とベルトは呟いた。  今までベルトは、トータスゴーレムとは何度となく戦ってきた。  本来ならパーティで戦う。しかし、必要に駆られて1人で戦い撃破した事もある。  そんなベルトですら、呟きを漏らすほどの巨大な固体。  要するに通常のトータスゴーレムと比較しても規格外の巨体と言う事だ。  そして、それは攻撃を開始した。  トータスゴーレムはベルトたちを押し潰そうと、掌を地面に叩き付けた。  ベルトは回避。  顔を叩かれたような風圧をメイルは感じた。  「お、降ろしてください。流石に私を抱えてじゃ……」  「――――いや、問題ない」  その言葉から見栄や強がりはない。事実を淡々と述べているように感じられた。  トータスゴーレム、次の攻撃は横から剥ぎ払うように腕を振るう。  ベルトは飛び上がり、回避しようとする。  しかし、それは罠だった。  残った片腕がジャンプしたベルトを狙い――――  右ストレートを放つ。  直撃すれば死あるのみ。  巨体が振る攻撃を受けて、耐えれる者は特殊なスキルを身につけた前衛職のみ。  ――――いや、前衛職でも耐え切れる者が何人いるか?  そんな一撃がベルトたちに向う。  しかし、攻撃は到達しなかった――――否。確かに直撃したはずだ。  だが、ベルトたちは無傷。  それどころか、トータスゴーレムは自ら横に飛び跳ね、横の壁に頭から衝突。  信じがたいことだが、ベルトは巨拳が接触する直前に体を回転させ、攻撃を往いなした。  そのまま、バランスを崩していくトータスゴーレムの腕を蹴り、加速させる。  自ら肉体のコントロールを失ったゴーレムは頭から壁に向って行ったのだ。  怒り  感情なきはずのゴーレムから怒りの咆哮がばら撒かれた。  だが、ゴーレムはベルトたちを見失った。  なぜならベルトたちはゴーレムの背後に――――そのゴーレムの弱点に飛び乗っていたからだ。  ≪|致命的な一撃《クリティカルストライク》≫  通常とは違い、蹴りで叩き込んだ『致命的な一撃』だ。  その正体は武道武術の世界で『遠当て』と言われる技が元になっている。  『遠当て』とは、遠くにいる敵に打撃を当てる技の総称。  ベルトのそれは衝撃波による打撃。壁越しに潜んでいる敵を倒す事すら可能だ。  では――――  なぜ、それを直接当てているのか?  それは敵の体内に衝撃波を叩き込むためである。  叩き込まれた衝撃波は、体内を移動して強度の高い所から低い場所へ――――  つまり、防御力を無視して弱点のみを破壊する技であった。  だから、当然――――  トータルゴーレムの体は瓦解した。  隠していた弱点。甲羅で覆われ保護されていた刻印が砕かれたのだ。  ・・・  ・・・・・・  ・・・・・・・・・  トータルゴーレムの崩れた体の破片。  ダンジョンから生まれる魔素を吸い込み、特殊な変質をしている場合が多い。  要するにレアドロップと呼ばれるものだ。  「もったいないですね」  「あぁ、だが仕方がない。持ち運ぶには大きすぎる。荷物を増やして攻略速度を遅らすわけには――――むっ!」  ベルトの目に止まったのは、ゴーレムを起動させるための刻印。  正確には、破壊した刻印部分。  「どうしたのですか?」  「いや……この刻印、妙に新しい。誰かが新しく……この場所にゴーレムを設置したのか?」  「……そんな、誰が、何の目的でしょうか?」  「わからない」とベルトは言った。  しかし、この時、彼は思い出していた。  暫く前、レッドトロールとの戦いを。その終了後に感じた視線。  今、それと同一の物を感じ取っていた。  誰か、何者かがコチラを覗いていると……

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