貴方が、私の義兄さんですね?

 ―――ベルトの店―――  「あの……ここは?」  少女は目を覚ました。  「ここは俺の店だ。アンタ、急に倒れたから」  「倒れた……私が……?」  ベルトは思い出させるために自分の腕を見せた。  「覚えているかい? 俺の腕を握って倒れた事を」  浄化の最中、黒く変色した腕は、徐々に肌の色を取り戻した。  しかし、完全には元に戻らなかった。  一部だけ墨タトゥーを入れたように模様が浮かんでいる。  二匹の蛇が絡み合っているような模様……  「そう……でした。私、呪詛を完全に浄化できなくて……」  「思い出したか? すまないが、この村には病院も教会もなくてな。休ませる場所がこんな所しかなかった」  「いえ、謝らないでください。意識を失った私を助けてくださったのでしょ? ……それよりも呪詛の事です」  少女はベルトの腕を掴もうとする。  しかし、今度はスルリと掴もうとしたベルトの腕が逃げた。  「え?」と意外そうな顔をする彼女にベルトは少しだけ怒ってみせた。  「おい、俺は呪詛や浄化というやつに詳しくない。けど、アンタが倒れた理由は、浄化だってことくらいわかるさ」  「で、でも、そんな強力な呪詛を放っておくわけにはいきません」  「むっ、これそんなに危険なものなのか?」とベルトは繁々と自分の腕を見た。  魔力による攻撃ではない。 魔力が使われていたらベルトにもわかるはずだ。  「戦場で受けた怪我と勘違いされていましたが……貴方は何者なのですか? 今まで見た魔族による呪詛とは別物としか思えないほどの危険な呪詛ですよ」  「う~ん」とベルトは少しだけ悩んだ。どこまで話すべきか?  できるだけ、自分が勇者のパーティにいたSSSランク冒険者。  それも暗殺者であった事はあまり人に知られたくない。  だけれども……   「俺は、元冒険者だ。それで戦場で呪詛を放った? 植え付けた? ……言い方はよくわからないが、それをやったのは魔王シナトラだ」  「――――!?!?」と少女は絶句して、目を白黒させていた。  ベルトは、自分が魔王と戦った事に驚いているのだろうと思ったが、それにしては様子がおかしい。  「この村出身で冒険者……それもハイランクの冒険者……」とぶつぶつと呟いている。  「さきほど、ここは貴方のお店だと言っていましたが……あの、お店の名前は?」  「ん? あぁ、そうか言っていなかったな」  「ここは『薬局カレン』だ。俺は店主のベルト・グリムって言う名前だ」  そう名乗ると彼女は、一瞬だけ目を見開いて驚く。  それから笑みは浮かべたかと思うと――――  瞳から一筋の涙が零れ落ちた。  「私、メイルです。メイル・アイシュ……カレン・アイシュの妹です」  「メイル・アイシュ! カレンの妹だって!?」  今度はベルトが驚く番だった。  「そうです……貴方が、私の義兄おにいさんですね?」   ・・・  ・・・・・・  ・・・・・・・・・  カレン・アイシュ  彼女は暗殺者ギルト時代に所属していた頃の相棒だった。  それは公私ともの相棒パートナー。  しかし、彼女は魔族に殺さた。   彼女を殺したのは勇者だと聞かされたベルトは、真相にたどり着くまで固執に勇者を狙う事になるのだが…… それは、また別の話だ。  「そうです……貴方が、私の義兄さんですね?」  「そ、そうだ……いや、俺とカレンは結婚はして……あれ? もしかして、結婚していた?」  確かに、カレンが死の直前、そんな会話をした記憶は残っている。  でも正式なものじゃなかったはず……それに彼女の妹にしても若すぎないか?  そんな混乱を知ってか、知らずか。彼女は――――メイルはとんでもない事を言い始めた。  「実は私、教会を止めて冒険者として生きていく事にしました。それで、暫くは、こちらでお世話になります!」

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